2019/10/19

ニコマート FT 1965年


(ブラック)

ニコンがFの普及版として1965年に発売したTTL平均測光露出計を内蔵した、ニコン初のTTL露出計連動機。
ニコマートは、ニコレックスFのスペックをアップし、より洗練した機種として、コパルスクウェア・シャッターとFマウントを持ち、ニコレックスFで果たせなかった35mm一眼レフの中級機分野への再参入ということで、日本光学として起死回生の新製品であった。ユニット型フォーカルプレーンシャッターのコパルスクウェアSを用いているが、同時代の他の機種がシャッターダイヤルをそのままボディ前面に突き出させているのに対して、シャッター側の速度変更をギアで引いてきてレンズマウント周囲にシャッターダイヤルを設けたことが特徴となっている。
ニコン初のTTL開放・全画面平均測光のCdS連動露出計を内蔵したFTと露出計の無いFSが発売された。
受光用のCdS受光素子はファインダーの接眼部脇に2個配置されており、位置的にはペンタックスSPなど他社の一眼レフと同様だが、素子の前に集光用のフレネルレンズを置いた点が他にない特徴。この集光レンズの存在が、接眼逆入射光の測光値への影響を減らすとともに、その後の中央部重点測光の開発にも繋がっている。

形式:TTL露出計内臓35mmフォーカルプレーンシャッター式一眼レフ
マウント:ニコンFマウント
ファインダー:ペンタプリズム固定式、視野率91.7%、倍率0.9倍
露出制御:CdS使用、全面平均測光、絞り込み測光可
シャッター:コパルスクウェア、上下走行メタルフォーカルプレーン、
レンズマウント周囲にダイヤルを設け、シャッター速度変更軸とはギア連結
シャッタースピード:B、1~1/1000秒、X接点1/125秒
セルフタイマー:作動時間最大10秒 シンクロ接点:X、M
電源:1.3V水銀電池×1
大きさ・重さ(ボディのみ):148×95×54.5mm、745(FT)
発売時価格:50mm F1.4付 54,500円 50mm F2付 45,000円

ニコマートFTの最大の特徴は、コニカFに源流を持つ日本独自のユニットシャッター(コパルスクウェア)を採用したこと。また、いち早くTTL露出計を内蔵したことである。
1967年には中央部重点測光のニコマートFTnになるが、ともにプロのサブカメラとして、またハイアマチュアの常用機として好評を博した。
ニコマートはFTn、FT2、FT3と細部が洗練されていき、1972年にはICによる絞り優先AEを持つELも登場した。
さらに1977年にはコンパクトな露出計連動機FM、翌年1978年にはコンパクトなAE機のFE、さらに1980年には初のジウジアーロ・デザインのコンパクトな大衆機のEMなどが次々と誕生する。
中でもF100はもはやサブカメラの域を脱し、F5のライバルになるほどであった。
またAF、AE全盛の時代に唯一生き残ったニューFM2は稀有なマニュアル機としてその存在価値を高めた。

ニコマート・シリーズは、FE、FMシリーズの前身となったシリーズ。その代表機がFTn。
「ガチャガチャ方式」は、ニッコールレンズがAi化される1977年までTTL測光機に採用されている。
本品は中古購入時トップカバーがFTNのものに換装されていたが、交換レンズの開放F値を半自動でセットする「ガチャガチャ方式」が組み込まれていない。シャッタースピード設定リングの形式から本体はFTであるろうと考えられる。

[掲載文献]
CAPA ニコン一眼レフのすべて P81
銀塩カメラ至上主義 P49
MF一眼レフ名機大鑑 P68
金属カメラ・オールガイド P62
写真工業 2007年9月号(Vol65 №701) P95
季刊クラシックカメラ4 35mm一眼レフの名機 P38
世界ヴィンテージ・カメラ大全 P239
日本のカメラ P105
国産実用中古カメラ買い方ガイド100 P75
中古カメラウイルス図鑑 P178
中古カメラ大集合 P97

[修理マニュアル]
やさしいカメラ修理教室 P12