2019/10/19

FE 1978年


1977年ミノルタXDによりAEの「両優先」または「マルチモード化」が実現したことで「絞り優先かシャッター速度優先か」という議論には終止符が打たれたが、XDもキヤノンA-1も自動露出のモードの選択肢が増え、カメラの操作が増えるというジレンマが出てきた。また、機構が複雑になったので、例えばシャッターのタイムラグが機械式のニコンF2で0.02秒、キヤノンF-1で0.04秒のところミノルタXDでは0.11秒、キヤノンA-1で0.13秒と長くなった。
そんな中、「操作のシンプル化」という別の切り口で発売されたのがニコンFMをベースに絞り優先AEのみを付けたニコンFEで、「シンプルニコン」のニックネームで1978年に発売された。ファインダー表示も追針式で使いやすい。

形式:TTL絞り優先AE35mm一眼レフ
露出制御:絞り優先オート、マニュアル
測光方式:中央部重点測光(受光素子SPD)
測光範囲:EV1~18、SPD素子使用
露出補正値:1/3ステップ ±2EV
露出補正ダイヤルは巻き戻しノブの基部にある。
シャッター:電子制御式縦走りフォーカルプレーン
「AUTO」が絞り優先AEで8秒までの低速シャッターが搭載されている。
レリーズボタンは内と外の両方にアクセサリーが付けられる。
シャッター速度:B、8秒~1/1000秒、機械式1/90秒、X同調1/125秒
ファインダー:アイレベル固定式、視野率93%、倍率0.86倍
スクリーン:交換可(3種類)、標準スプリット・マイクロ式
プレビュー:レンズマウント左のプレビューバーを押し込む
セルフタイマー:向かって左に倒して最大10秒。
AEロック:セルフタイマーレバーと兼用。右方向に倒している間測光データが記憶される。
多重露光:巻き上げレバーの前側にある小さなレバーを手前に引きながら巻き上げるとシャッターのみがチャージされる。
フィルム給送:レバー巻上げ、分割巻上げ不可。モータードライブ装着可(MD11、MD12)
裏蓋の開き方:裏側左上のロックレバーを押し下げながら巻き戻しノブを引き上げる。
電源:SR44×2、LR44×2、CR1/3N×1
バッテリーチェック:背面左上のレバーを押し下げると中心のLEDが点灯する。
露出計連動レバー:マウント上部の小さなボタンを押しながら突起を倒すとAi化以前のレンズが装着できる。ただし、開放絞りの連動は解除されるため、絞込み測光のみとなる。
大きさ・重さ:142×89.5×57.5mm、579g
ボディ価格:69,000円(ブラックは4,000円高)

機械式シャッターを搭載した完全マニュアル機のFMに対してFEは電子シャッターを搭載したAE機。外観はそっくりだが、全く違う性格を備えた兄弟機である。ファインダー内の表示は、ニコマートELを継承した追針式で、マニュアル露出時はファインダー内のメーター指針とシャッター速度を示す指針を重ね合わせることで適正露出になる。
露出計受光素子は、FMのGPDと異なり、SPDを使用。電子回路はニコンEL2と共通のモノシリックICを使用し、銀電池2個、2Vで駆動しているが、回路規模が大型となるためFMのように巻き戻しノブ周囲のスペースには収まらず、ペンタプリズム部分にフレキシブルプリントサーキット(FPC)を載せている。また、シャッターを電子制御としたため、専用のスピードライトのスイッチを入れると、オート時には自動的に同調速度の1/90秒に設定され、ファインダー内のレディライトが表示される。
マウント基部のAiレンズとの連動ピンを跳ね上げると、FMと同様、絞込み測光(プレビーレバーを操作)になるが、Ai以前のレンズが装着可能になる。
また、FEからフォーカシングスクリーンの交換が可能になった。それまでもF一桁機はスクリーン交換が可能だったが、ペンタ部固定の機種でレンズマウント側からスクリーンを交換する形式は、ニコンではFEが初めてである。

ニコンはニコマートELで絞り優先AEを採用し、このFEでもそれを踏襲した。
レンズの絞りリングで絞り値を設定すれば適正露出を維持しながらシャッタースピードが自動的に変化する。
ニコマートELシリーズまでのボディと比べ、大幅にコンパクト化されたFEだが、AE機構を組み込むことに成功した。
さらにモータードライブとのコンビでELを凌駕するフットワークのよさを実現した。
またファインダー表示もEMのLED方式に変えて追針式を採用、AE時もマニュアル時も視認性がよく使いやすい。

[掲載文献]
CAPA ニコン一眼レフのすべて P92 マニュアルニコンのすべて P60
国産実用中古カメラ買い方ガイド100 P73 図解・カメラの歴史 P163
ノスタルジックカメラ・マクロ図鑑 P128 金属カメラオールガイド P106
ニコンカメラのココが一番・攻略百科 P54
写真工業 2006年 9月 №689 P44
日本カメラ博物館「世界を制した日本のカメラ」 P22