2019/09/23
フレックスRM 1962年
キヤノンフレックス(1959年)、キヤノンフレックスR2000及びキヤノンフレックスRP(1960年)に続き1962年に発売されたキヤノンフレックスシリーズの最終機。
当時露出計を内蔵した高級機は少なかったが、RMはコニカFに次いで2番目に装備している。しかし、コニカFが極少数の生産で終わっているため、約72,000台作られたRMが実質的には国内初の露出計内蔵高級一眼レフカメラといってもよい。
露出計は、前年(1961年8月)に発売されたキヤノン7型で採用された技術を利用したもので、セレン光電池式である。右側の大きめのシャッターダイヤルの回転は糸で左側のメーター部にある絞り値が書き込まれた円盤に連動しており、メーター針に合った数値を読み取る方式。
この後1964年にキヤノンFX、FTが発売、絞り連動機構の変更に伴いレンズマウントが変更になった。
形式:外光式セレン単独露出計内蔵35mm一眼レフ
マウント:外爪バヨネット式(スピゴットまたはブリーチロックマウント)
標準レンズ:50mm F1.8(4群6枚構成ガウス型)と58mm F1.2(5群7枚構成)の2種類
露出方法:絞り値読み取り式。外光式セレン単独露出計内蔵、シャッター速度連動、EV6~17(ISO10~800)
ファインダー:ペンタプリズム固定アイレベル式、
視野率上下92%、左右94%、倍率0.8倍
シャッター:2軸式布幕横走りフォーカルプレーン B、1~1/1000秒
セルフタイマー付
フィルム巻上げ・巻き戻し:レバー式巻上げ、クランク式巻き戻し
大きさ・重さ:145×92×47、684g(50mm F1.8レンズ付 982g)
発売時価格:50mm、F1,8(4群6枚構成ガウス型)付 49,500円
58mm、F1.2(5群7枚構成)付 69,000円
Rシリーズはトリガーレバー式だがRMはトップカバーに巻き上げレバーを移した。それまでのキヤノンフレックスとボディシェルは共通であるが、上部カバーの背を高くし、相対的にペンタ部を極端に低く抑えた独特なデザインである。
キヤノンフレックスが登場した1959年5月には、ペンタプリズム式一眼レフは8機種も存在。6月にはニコンFが登場。フレックスはこれらの一眼レフには常用とされていた機構を独自のメカニズムで構築し採用した。ここまでのRシリーズのレンズは「スーパーキヤノマチック」と称し、マウントはレンズ装着後レンズ側のリングで締めるスピゴット型バヨネットで、レンズ内の自動絞り用スプリングをボディ側からチャージするので2本の連結ピンを持っている、キヤノンフレックス独自の完全自動絞り機構、測光時のレンズの絞込み機構を巻き上げの動作と連動させて制御伝達用のピンやレバーを可動させるもの。
マウント方式もバヨネット式とスピゴット式を融合した設計で、1980年代のFDレンズまで継承される。1964年発売のFX(Fシリーズ)以降、マウントはR系と共通だが、自動絞りが一般的な1本ピンに変更され、スーパーキヤノマチックレンズは使えなくなった。RマウントにFLやFDレンズは、取り付けることはできるが、マニュアルでしか使用できない。
交換レンズは35mm F2.5~2000mm F11まで17本用意されていた。
フレックスシリーズはRシリーズと呼ばれ、約3年間に4機種を出しているが、一眼レフに必要な「システム環境」という点でニコンFに及ばなかった。Rシリーズはマーケティング的には満足のいくものではなかったが、使い勝手では他社製品より優れたカメラだった。約7万台を販売した。
キヤノンのRシリーズは、ニコンFの完成度の高さに負けてか、初代キヤノンフレックスは約17,000台を生産しただけで終わり、翌1960年9月にR2000とRPの二本立てで戻ってくる。しかし、販売には結びつかず、RPが約31,000台R2000はわずか8,800台ほどしか作られなかった。1962年4月に全く違うコンセプトで開発したRMを発売する。
[掲載文献]
カメラレビュー クラシックカメラ専科 №31 「キヤノンハンドブック」 P60
往年のキヤノンカメラ図鑑 P92、98 こだわりのカメラ選びPart2 P134
図解・カメラの歴史 P109 日本のカメラ P93
写真工業2006年1月Vol.64 №681 P50