ニコンFの普及機として開発されたレンズシャッター式一眼レフ機で、ニコレックスシリーズの最終機である。当時、ニコン35mmフィルムカメラではF一桁機とレンジファインダー機以外では初めて「NIKON」を冠したカメラである。海外向け(主に米国向け)は、ニコレックス35となっていた。
ファインダー:ペンタプリズム固定式、焦点板交換不可、倍率0.83倍
ミラー:クィックリターン式
レンズ:ニッコールH 48mm F2 №687234
シャッター:セイコーシャSLV、B、1~1/500秒、セルフタイマー付
露出制御:外光式セレン式露出計連動、シャッター速度優先AE、マニュアル可
セレン式メーター使用のため、測光範囲が狭く、EV7~17であった。
定点式連動露出計はメーター指針位置を段カムで検出する形式。
焦点調節:マニュアルフォーカス
フィルム巻上げ・巻き戻し:一作動レバー式、小刻み巻上げ不可、クランク巻き戻し
シンクロ接点:V、X、M
大きさ・重さ:144.5×93×74mm、800g
価格:29,500円、ケース2,000円
1964年8月17日発表、9月20日発売のニコン初のシャッター速度優先AE一眼レフ機。
販売的には成功したとは言えず、一眼レフカメラとしては短命(販売期間1年4ヶ月)で販売台数約30,000台であった。
ニコンオート35はニコンのレンズシャッター式一眼レフの4代目で、初代はニコレックス35でマミヤ光機のOEMだった。ニコレックス35などに採用されていたポロミラー形式のファインダー光学系は、オーソドックスなペンタプリズム式に変更されているが、デザイン的にはペンタプリズムの三角形を上部に出さないフラットな軍艦部にしている。このため大型になってしまった。この形状のため巻上げレバーも軍艦部ではなく、ボディと上カバーの隙間にある。シャッターボタンも上部には無く、ボディ前面で斜めに押す形式になっている。
レンズは固定式なので、コンバージョンレンズが用意されていた。
コンバージョンレンズ
ワイドコンバージョンレンズ:合成焦点距離35mm F4 10,500円
テレコンバージョンレンズ:合成焦点距離 85mm F4 13,800円
ニコンのレンズシャッター式一眼レフにはニコレックスシリーズがあり、大きく3種類の機種があるが、その中でオート35のみがクイックリターンミラーを採用している。
ニコレックスシリーズ
ニコレックス35 1960年(昭和35年) 23,800円(ケース付)ニコレックス35Ⅱ 1962年(昭和37年) 21,300円(ケース付)
ニコレックスズーム35 1962年(昭和37年) 42,800円(ケース付)
ニコレックスF 1962年(昭和37年) 51,300円(50mm F1.4レンズ付)
ニコンオート35 1964年(昭和39年) 31,500円(ケース付)
ニコレックスはニコンFの影に隠れた存在。しかし、ズーム35は国産スチルカメラ初のズームレンズ搭載機。オート35は日本光学初のシャッター優先AEと意欲的な機能を持ったシリーズであった。ニコレックスの最後はニコレックスFで、ニコンF用アクセサリーが共用できるなどニコンFのサブ機的なカメラであった。
ニコレックス35は昭和35年6月発売から昭和39年3月販売終了で3年9ヶ月と短い期間であった。
[掲載文献]
マニュアルカメラ全集 P13
カメラの歴史散歩道 P270
(写真工業 1964年10月号に紹介記事あり)
[修理マニュアル]
レンズシャッターカメラ修理教室 P142