2019/10/19
ニコマート EL 1972年
世界最初のIC化されたAE一眼レフ。ペンタックスESとともにTTL-AEの時代のさきがけとなったモデルである。
形式:TTL電子制御絞り優先AE35mm一眼レフ
露出制御:絞り優先オート、マニュアル
測光方式:TTL中央部重点測光(受光素子CdS)、測光範囲EV1~18
ISO感度設定:25~1600
シャッター:コパルスクウェアSE
電子制御式、縦走りフォーカルプレーン、A、B、4~1/1000秒
機械式 1/90秒、X同調 1/125秒
ファインダー:アイレベル固定式、視野率92%、倍率 0.8倍
スクリーン 固定(マイクロマット式とスプリットイメージを購入時に選択)
フィルム給送:レバー巻上げ式、 改良型ELWはオートワインダー装着可
AEロック:セルフタイマーレバーをレンズ側に押し続けることでAEロックになる
電源ON:巻上げレバーを赤点が見えるまで引き出すとスイッチがONになる
電源:4SR44×1個、または4LR44×1個
大きさ・重さ:145×93.5×54.5mm、778g (ボディのみ)
ボディ価格:60,500円(ブラックは2,500円高)
ニコン初の電子シャッター方式絞り優先を搭載した機種。AE機としては、ペンタックスES、ヤシカエレクトロAXに次いで3番目だが、ペンタックスはマニュアルのスローシャッターがなく、ヤシカはレンズの絞りが常時絞込み状態で、開放ボタンを押してピントを合わせるという変則スペックだったので、フルスペック機としては世界初であった。
ニコマートの名称がついているが、FT、FTNとはボディダイキャストから全く別物、外観も変わり、シャッターダイヤルも通常の位置に移動、FTとはボディ構造は全く別物で、また全く異なるデザインとなっている。
コパルスクウェアSの電子シャッター版であるコパルスクウェアSEを使用し、制御用の回路も新たにカスタムのICを製作している(IC制御で絞り優先TTL-AEを実現)。また、シャッターダイヤルをAの位置にすると絞り優先オートになるが、マニュアル露出にしたときも適正シャッター速度を示すファインダー内のメーター指針は生きていて、シャッターダイヤルに連動した追針をこれに重ねることで適正露出が得られる。このメータードマニュアルの方式は、意図的に露出を適正からずらす場合にズレ量が一目でわかるため大変便利。その後に発表されたFEにも受け継がれている。
ニコン初のAE機はシャッタースピード優先オートを採用したニコンオート35だが、ニコマートELは絞り優先オートを採用。さらに電子シャッターの搭載で、それまでマウント部にあったシャッターダイヤルがボディ上面に移動、上級機のF一桁シリーズと同様の操作性を実現した。
また、ニコンで初めてホットシューを採用したカメラでもある。
電池室はミラーボックスの中にあるので、ミラーアップして電池交換する。
1970年代TTLが当たり前になった一眼レフ市場において、次はAE搭載が当たり前になっていった。ニコマートELは電子制御シャッターを採用することで、絞り優先AEを実現。この方式はレンズ側にかける負担が少ない。ELは高い評価を受け、その後オートワインダーを装着可能にしたELW、そして露出制御系の回路を全面的に見直し、Ai化されたEL2へと進化していった。
[掲載文献]
CAPA ニコン一眼レフのすべて P90
ニコンカメラのココが一番・攻略百科 P65
小倉磐夫 「国産カメラ開発物語」 P116
カメラレビュークラシックカメラ専科 2005年 77号 P
20世紀☆カメラ1950~2000 P44
ノスタルジックカメラ・マクロ図鑑 Vol.Ⅱ P14
国産実用中古カメラ買い方ガイド100 P74
入門金属カメラオールガイド P63
日本のカメラ P