2019/10/07

Minox

エストニアのウォルター・ザップ(Walter Zapp)とリチャード・イルゲンス(Richard Jurgens)の二人の技術者がカメラを製造する会社を設立したのは1932年であった。当初は中判カメラを製造しようとしたが挫折し、ザップのアイディアで超小型カメラの開発を進めることになった。試作モデルの開発に3年を要し、ラトビアのリガにあったValsts Electrotechniska Fabrika社が、ザップとイルゲンスとの間にこのミニチュアカメラの製造契約を1936年に結んだ。そして製造されたのが現在「リガ・ミノックス」と通称される初代ミノックスで、1938年から1943年まで製造され、ソ連占領期を除いてmade in Latviaと刻印されている。
第二次大戦時ラトビアは最初にソ連に(1930~1941年)、この時期のミノックスにはMade in USSRと刻印されている。次にドイツに占領され、ザップたちはドイツに移住し、ミノックス有限会社を1945年ウェッツラーに設立した。さらにギーセンの側に新工場を作り、1949年からミノックスⅡ型の製造を開始する。初代機はステンレス製であったが、このカメラは、アルミニウム製となり軽量化されている。アメリカではミノックスA型として販売された。1958年には露出計が内蔵されたミノックスB型が、1969年には自動露出機構を内蔵したミノックスC型などさまざまなモデルが登場した。
さらに1974年に初の35mm判カメラ、「ミノックス35EL」を発売。このプラスチック製の電子制御カメラは前蓋沈胴式にすることで抜群の携帯性を獲得、35mm判フルサイズカメラとしては当時世界最小であった。その小型化のコンセプトは、ローライ35同様他メーカー、特に日本のカメラメーカー各社に大きなインパクトを与え、類似のカメラを登場させることになった。
しかし、1980年代になると会社の経営状態が悪化し、1989年に倒産。当時84歳になっていたザップが再建の手をさしのべた。その後1996年にライカ社によって買収された。現在もノックス社はウェッツラーのウォルター・ザップ・ストリート4番地で活動を続けている。ザップは2003年スイスで死去した。
(世界ヴィンテージ・カメラ大全 P139)