2019/10/18

TC-1 1996年


エンジニアの執念が生んだ名刺サイズの超小型、超高品質、超高画質。
ローライ35、ミノックス35、コンタックスT2、ニコン28Tiなどをはるかにしのぐ超小型、高性能コンパクトカメラ。フルチタン外装、個性的な周辺光量不足が生む個性的な画像。

形式:35mm判レンズシャッターAF・AEコンパクトカメラ
マウント:レンズ固着式
レンズ:Gロッコール 28mm F3.5
5群5枚構成。ガラスモールドによる第3群は両面、第4群は後面が非球面となっている。レンズにロッコール名が復活した。
シャッター:電子式レンズシャッター 8~1/750秒 セルフタイマー付
レンズ第3群と第4群の間に収納された2枚羽根シャッターで、絞り開放で1/350秒、最高F13.5で1/750秒を達成している。
絞り:円形ターレット絞り
絞り羽根を使わず、直径の異なる種類の円穴の開いた絞り板が順送りされる方式。
ファインダー:実像式ファインダー、倍率0.4倍、視野率85% (28mmレンズに対し一眼レフクラスの高倍率)
露出モード:絞り優先AE
測光は、中央にスポット測光部分を持つ分割タイプ。
スポット測光は、ファィンダー中央部の円形サークルで、画面面積の約3%
測光方式:外光測光式、受光素子SPD
焦点調節:マニュアル、位相差方式パッシブAF
シンクロ接点:なし、ストロボ内蔵(ガイドナンバー7、0.45~2m(ISO100))
フィルム巻上げ・巻き戻し:自動巻上げ、巻き戻し
オートローディングだが、横幅を狭くするためスプロケットが省略されている。フィルムのコマ送りはLEDの反射光で読み取る。
電源:CR123A 1個
大きさ・重さ:99×61×29.5mm、185g(電池入り200g)
価格:148,000円

TC-1のモデル名は、究極のカメラを意味する「ザ・カメラ」に由来している。
しかし、ミノルタ社内ではもっぱら「谷井カメラ」の俗称が浸透している。TC-1は、ミノルタの技術者、谷井純一が、ポケットにすっと入る、簡単に持ち出せる、気楽なカメラを発想して、個人の開発として生まれた。
内部のボディ本体はプラスチック構造だが、前カバーは0.8mm、上カバー・裏蓋・底蓋は0.6mmのチタン板のプレス成形。
表面はメッキではなく、透明コーティングが施されているが、このコーティングは擦り傷が付きやすい。ボディの右手側には滑り止めの黒色人造皮革が張られている。

キングサイズのタバコ箱と同程度の容積に高性能を凝縮した。製造現場では最高の熟練工に組み立てを委ねたという。

ペンタックス・エスピオミニ(1994年)も、最も小型化された単焦点レンズのコンパクトカメラで、レンズは32mm F3.5 AF、プログラム電子シャッターAE、ストロボ内蔵、モーター巻上げ・巻き戻し、デート機能、パノラマサイズ切り替え機能が付いた、スライトバリア式コンパクトカメラで、10.7×5.8×3.5mm、155gであった。(カメラの歴史散歩道)

1998年には、ブラッククロームメッキとブラックペイントを加えた「TC-1リミテッド」がミノルタ創業70周年記念モデルとして2,500台が限定発売された。178,000円であった。

[掲載文献]
ニューフェース診断室「ミノルタの軌跡」 P166(詳細説明)
ミノルタカメラのすべて P10(誕生秘話、詳細説明)
銀塩カメラ至上主義 P431
20世紀☆カメラ P87
マニュアルカメラ全集 P148
極上カメラ100 P176
日本カメラ博物館「世界を制した日本のカメラ」 P18