2019/09/10

ワイド 1955年

世界初の35mm広角レンズを組み込んだレンズシャッター・カメラ。
オリンパス35Ⅴ型に35mmのワイドレンズを装着したワイドレンズ専用機。

オリンパスの35mmカメラへの取り組みは早く、昭和23年には早くもレンズシャッター機「オリンパス35Ⅰ」が登場。最初にヒットしたのは35Ⅳで、本格的に成功したのは昭和30年の「オリンパス・ワイド」であった。
この時期、レンズシャッター・カメラは50mm前後の標準レンズ付のものだけで、広角の写真を撮るには、高額なフォーカルプレンシャッターカメラと交換レンズとして広角レンズを求める必要があった。広角の交換レンズは当時のレンズシャッター・カメラよりも高額であった。「オリンパス・ワイド」は広角レンズ一本よりも安い価格で広角写真が撮れるカメラとして発売された。
広角35mmレンズを装着したワイドはわずか550gという軽さと低価格で爆発的にヒットした。35mmレンズシャッター・カメラは矢継ぎ早にシリーズ化された。ワイドは2年後に国産初の露出計内蔵カメラ「ワイドE」が出された。
「オリンパス・ワイド」を追い、35mmレンズシャッター・カメラは他社からも発売されてアマチュアの広角写真ブームを作った。

形式:35mm判レンズシャッター式カメラ
レンズ:Dズイコー-W F.C 35mm F3.5 (№141185)
シャッター:コパルMX ビハインド式 B、1~1/300秒 (№56167704)
ファインダー:採光式ブライトフレーム式
焦点調節:目測式
大きさ・重さ:125×80×58 mm、541g
発売時価格:16,000円
オリンパス・ワイドにはシンプルでシンメトリーな初期型、35mmF2の大口径レンズが付いたオリンパス・ワイドスーパー、セレン単独露出計を内蔵したオリンパス・ワイドEがある。
レバー巻上げ、クランク巻き戻し付は1958年(昭和33年)の2型で、コパルシャッターも1/500秒までとなった。
F2付きは初代機の倍以上の37,000円になった。F2つきはアマチュアだけでなく、プロのサブカメラとしても使われた。

戦後の1950年代半ば、写真表現の世界でリアリズム写真運動などによる新しい潮流が生まれた。35mmカメラ(「ライカ」「ニコン」「キヤノン」などのレンズ交換式カメラ)で35mm広角レンズなどを使ったスナップ的な撮影が流行った。しかし、当時はレンズ交換式カメラが高価な上に、交換レンズがまた高価で、一般のユーザーは手が出なかった。こうした中で、広角レンズをレンズシャッター・カメラに組み込んだカメラがリーズナブルな価格で提供したいという発想がオリンパス光学社内に生まれ、既に完成していた「オリンパス35」のモデルチェンジ機「V型」のボディにライカマウント用に開発していた35mm広角レンズを組み込み完成したのが「オリンパスワイド」である。
16,000円という価格は、当時2万円以上していた35mm広角交換レンズより安かった。カメラ本体も小型であり、スナップ撮影には最適で、レンズ交換するよりもこのカメラをサブカメラとして使うほうが便利だというプロやハイアマチュアを含め多くのユーザーに受け入れられた。これがワイドカメラのブームの先駆けとなった。
「カロワイド」「マミヤ35ワイド」「ミノルタ・オートワイド」「リコーオートワイド24」などが発売された。
一世を風靡したワイドカメラのブームも1959~1969年には急速に衰微していった。
35mmレンズシャッター・カメラ分野では高性能化、レンズの大口径化、露出のAE化も進み、ハーフサイズ・カメラが登場して大きな流れを作りユーザー層が拡大。ベテラン・ユーザーの愛用する高級機の分野では35mm一眼レフが台頭してきた。一眼レフの交換レンズは、より性能が充実し、また値下げなどもあって、それを使うメリットが高まったなどによる。

レバー巻上げ、クランク巻き戻しのタイプは1958年の2型。シャッターは1/500秒になった。

[掲載文献]
季刊クラシックカメラ12 「オリンパス」 P40
季刊クラシックカメラ №14 ミノルタロッコールの伝説 P85
カメラの歴史散歩道 P240
こだわりのカメラ選び Part1 P40
中古カメラ大集合 P217
日本のカメラ P83、85