2019/09/23

キヤノネット最初期型 1961年


(シャッターねばり、メーター不良)

日本のカメラを本格的にAE時代に踏み込ませたカメラ。
1961年の初めに発売、日本のAEカメラとしては、1960年発売の「オリンパス・オートアイ」に次いで、二番目の機種である。
発売早々大きな人気を獲得した35mmレンズシャッター式AEカメラ。2万円を割った価格(18800円)で、他のメーカーからクレームが出、発売時期を遅らせた。
高級カメラを基本路線としてきたキャノンが、新しいカテゴリーに参入する戦略的意義を持ったカメラであった。
インダストリアルデザイナーによるデザイン。

形式:35mmレンズシャッター式距離計連動・シャッタースピード優先式EEカメラ
レンズ:45mm F1.9(4群5枚構成、当時のユーザーの志向にあった大口径レンズを採用)
シャッター:コパルSLV、B、1~1/500秒、セルフタイマー内蔵
ファインダー:二重像合致式連動距離計と逆ガリレイ式の一眼式。
ブライトフレーム式パララックス自動補正トリミング・マークファインダー、倍率0.67倍
EE機構:櫛歯制御式シャッター速度優先AE、サークルアイ式のセレン受光窓
巻き上げ:底部のトリガー巻上げ
距離計連動式
シャッター:コパルSLV、 B、1~1/500秒 セルフタイマー付き
大きさ・重さ:140×78×64mm、700g
発売当時の価格:定価19,800円、現金正価18,800円
1964年にCdS式、巻き上げレバーが通常の上部に改良した「S型」に、その後も改良を加えて、ロングラン・ベストセラーを続けた。
このカメラでAEカメラの展開に火が付いた。
高級AEカメラとして、全世界で実績を上げた「ミノルタ・ハイマチック」シリーズ、「ヤシカ・エレクトロ35」シリーズがある。

キヤノネットは1960年(昭和35年)8月に「発売価格は20,000円を切る」と発表したことで業界内外に「キヤノネットショック」と呼ばれる大きな社会現象を起こし、発売が翌年に持ち越されている。
キヤノネット発売以前の1960年、同じく距離計連動で自動露出機構内蔵のレンズシャッター機オリンパス・オートアイがケース付き21,500円、カメラのみで20,000円で発売されたが、この時は大騒ぎになっていない。
しかし、キヤノネットが定価19,800円(ケース別)だと業界団体のみならず、公正取引委員会に通産省まで巻き込んでの大騒ぎになっている。
これは、単に価格の問題ではなく、キヤノネットが自動露出機構、大口径F1.9のレンズ、パララックス自動補正付き連動露出計など当時の理想を全て内蔵して、交換レンズ一本程度の価格だから問題視されたのであろう。

[掲載文献]
カメラレビュー クラシックカメラ専科 №31 「キヤノンハンドブック」 P79、87
カメラの歴史散歩道 P51、206
クラシックカメラの世界 P104
写真工業 2005年5月号(Vol63 №673) P36
写真工業 2006年10月号(Vol64 №690) P76
写真工業 2007年6月号(Vol65 №698) P44
ノスタルジックカメラ・マクロ図鑑 Part1 P68
季刊クラシックカメラ6 キヤノン P20
神立尚紀 図解・カメラの歴史 P190
小倉磐夫 「国産カメラ開発物語」 P155

[修理マニュアル]
レンズシャッターカメラ修理教室 P61
カメラの改造と修理術 P90
カメラ修理のABC P187