2019/10/10
スタート35 ジュニア 1950年
スタート35は1950年発売。ボルタ判の代表的一台で小学生が愛用した。
使用フィルム:ボルタ判 (35mm裏紙付き)
画面サイズ:24×24mm
レンズ:ガラスメニスカスレンズ単玉 42mm F8位、固定焦点
シャッター:ロータリー式 B、I(単速 約1/30秒)
絞り: F8、円盤を噛ませることでF12、16にする
同じ年に発売されたスタートⅡ型ではレバー切り換え式になった
ファインダー:素通し 等倍
巻き上げ:赤窓式 12枚撮り
大きさ・重さ:83×57×53mm 122g
価格:550円
野村光学研究所で生産され、一光社から発売されたボルタ判カメラである。
ボルタ判フィルムは、もともとは1936年にドイツ・ニュルンベルクのボルタ・ヴェルクが生産した小型カメラ「ボルタビット」のために用意された新しい裏紙付き35mmフィルムで、オリジナルは35mm無孔フィルムを使う25×25mmの画面サイズだった。
しかし、ボルタ・ヴェルクでは、1937年に発展型のボルタビットが作られただけで1938年からは35mmフィルムを小さな専用パトローネに詰めて使うカメラに変わり、ドイツにおけるボルタ判は消滅してしまう。
日本では、1938年にボルタ判を使う「ボルタックス」が誕生。コンパクトな携帯性に優れた小型カメラとして販売された。
戦後になっても、1946年から「ダン」、1948年から「ピクニー」などの中級カメラが生産されて、日本独自のボルタ判に発展し、24×24mmだけでなく、29×29mm、28×28mm、24×28mm、25×31mm、24×36mm、25×37mmなど多くの画面サイズのカメラが作られた。
ボルタ判の裏紙は中央に30mm間隔、両端に38.4mm間隔で数字が印刷されているから、全てのサイズが可能だったが、「ダン35Ⅱ」、「ピクニー」、「マミヤ・マミー」のように自動巻き止めを採用したカメラもあった。
「スタート35」はベークライト製のボックスカメラで、レンズは固定焦点の単玉、焦点距離約50mm、シャッターはBとIのみ、絞りは回転盤に穴の開いたもので、F8、11、16が切り換えられた。
焦点面は丸みのあるアパーチャーとカメラボディとフィルムの剛性とが微妙なバランスで作り出す曲面となっている。
1950年に誕生した最初の「スタート35」から1958年の24×36mm判になった「スタート35KⅡ型」まで、9年間に3機種が発売されている。
スタート35Ⅱは一光社が生産した。レンズはコーティングされ、ファインダーは素通しの等倍、画面寸24×24mmであった。Ⅱ型になってファインダーにクロームのカバーが付き、ガラスが入った。また絞りはレバー切り換え式になった。
スタートK型はレンズが47mmとなり、絞りはF16のみ、画角サイズは24×34mmに拡大している。
スタート35には名前が異なるが形がよく似た「リッチレイ35」、「リチカ」、「エボニー35」などのカメラが存在する。販売時期は「スタート35」より遅いが、「リッチレイ35」と「リチカ」は1951年から1952年の2年間で合計14機種が販売された。
これは、「スタート35」の発売に関わった野村光学研究所が、リッチレイ商会の販売ルートに名前を変えたカメラを出荷したと考えられるが、これも1951年の後半からはリッチレイ商会が独自で生産したようである。
[掲載文献]
写真工業 2006年10月号(Vol64 №690) P46
学研「大人の科学」マガジン Vol.25 P40
日本カメラ博物館「世界を制した日本のカメラ」 P31