2019/10/19
FA 1983年
世界初の「マルチパターン測光」を搭載したカメラ。「分割測光」の元祖。
ニコンで初となる3方式(プログラムオート、絞り優先オート、シャッター速度優先オート)が搭載された。
初代カメラグランプリの栄冠に輝いた。これを記念して金メッキにトカゲ革を使用した限定モデル「FA Gold」も発売された。
形式:電子制御式35mm一眼レフ
露出制御:プログセムAE、シャッタースピード優先、絞り優先、マニュアル
レンズマウント:ニコンFマウント
ファインダー:ペンタプリズム使用アイレベル式、アイピースシャッター付き
視野率約93%、ファインダー倍率0.8倍
スクリーン交換可
測光方式:TTLマルチパターン測光、中央重点開放測光、瞬間絞り込み制御
ファインダー内表示:受光素子にマルチセグメントSPDを2個使用、
別にTTL調光用受光素子SPDを1個使用
露出計連動:Ai方式
ISO感度設定:12~4000
露出補正:1/3ステップ、±2EV
シャッター:上下走行式チタン膜メタルフォーカルプレン・シャッター
シャッタースピード:P、Aモード、8~1/4000秒(無断階)
S・Mモード、8~1/4000秒(13階) メカニカル、B、1/250秒
セルフタイマー:作動時間10秒
シンクロ接点:X接点のみ、1/250秒以下でスピードライトに同調
電源:3Vリチウム電池(CR1/3N)×1、1.55V銀電池(SR44)×2
1.55Vアルカリマンガン乾電池(LR44)×2のいずれか
寸法・重さ:142.5×92×64.5mm、625g(ボディのみ)
発売時価格:50,000円(ボディのみ)
50mm F1.2付 165,000円 50mm F1.4付 151,000円 50mm F1.8付 135,000円
現在のAFカメラでは、電子接点による情報伝達を行っているが、レンズとボディ間の伝達を機械式で行う当時のシステムでは究極の自動露出カメラであった。電子接点のないAi-Sレンズを装着して、プログラムオートとシャッタースピード優先オートを使用できるのはFAだけである。
TTL露出計は全てのレンズを通った被写体の明るさを、平均して反射率18%のグレー相当に再現するように設定されている。画面に強い光源が入ったり、逆光では主要被写体が暗くなってしまい(露出アンダー)、黒い背景では主要被写体が明るく写りすぎる(露出オーバー)。それを改善するために、中央部重点測光、部分測光、スポット測光など、さらには露出補正機構など、さまざまな試みがなされたが根本的解決にはならなかった。そこで、撮影画面の中をいくつかの部分に分割して、夫々の明るさを測定して、コンピュータ制御により最適な露出を決める「多分割測光」という考え方が生まれてきた。この方式の元祖は、アナログ算出方式ながら画面を2分割して測光するミノルタSR101で採用されたCLC方式(1966年)だが、その後の電子技術の進歩により、画面をさらに細かく分割し、最適露出をコンピュータで算出、制御することが可能となった。この方式を実用化したのがニコンFAである。
1977年、日本光学のカメラ部門では2つの開発チームが設けられた。1つは1/4000秒の高速シャッターを実現するチーム。もう一つは1983年登場のニコンFAに搭載されたマルチパターン測光の開発チームだ。ニコンFAはこの測光方式が賞賛され第一回カメラグランプリを受賞した。
[掲載文献]
CAPA ニコン一眼レフのすべて P94 趣味のニコンカメラ P78
写真工業 2007年1月号(Vol65 №693) P40 MF一眼レフ名機大鑑 P386
カメラレビュー・クラシックカメラ専科 №77 P72
国産中古カメラ・買い方ガイド100 P65
神立尚紀 図解・カメラの歴史 P 174