2019/10/08

SX-70 Land camera 1972年


ポラロイドのシリーズで人気度ナンバーワンのモデル。
ポラロイドSX-70の日本国内での発売は1974年6月。アメリカでは1972年に一部地域で、1973年の末には全米で売り出され、「アラジン」の名で呼ばれていた。
アメリカでの価格は180ドルであった。フィルムは10枚撮りで3300円と高かったが他に比較するものがなかったので受け入れられた。

形式:自己現像一眼レフ方式インスタントカメラ
フィルム:ポラロイドSX-70フィルム(ISO150)
画面:76.5×79mm(フレーム88.6×117.2mm)
レンズ:116mm F8 4群4枚構成
最短撮影距離:26cmで接写もできる。
1970年代ではここまで近接できる撮影レンズは殆ど無かった。
フィルム送り:モータードライブ 1.5枚/秒
シャッター:電子制御式プログラムEE、14~1/180秒、露出補正±可能
電源:フィルムパックに内蔵 6V
大きさ・重さ:106×44×181mm、678g(750gフィルムパック含む)
発売時価格:79,800円

インスタント写真方式は1948年の「ポラロイド・ランド95」から始まった。
ポラロイド社は、1937年エドウィン・ハーバード・ランドが創立した。ランドの娘が3歳の時、「どうして写真はすぐ見えないの?」と言ったことにヒントを得て、ランドは拡散転写法によるインスタント写真とカメラの開発に着手し、1947年アメリカ光学会で「インスタント拡散転写法画像形成法と撮影機器」を発表。その成果からインスタントカメラを開発し、後にインスタントカメラの代名詞になるポラロイドは成長する。
ネガとポジの乳剤面で現像液カプセルをサンドイッチして撮影後ローラーの間を通してカプセルを潰して現像液を充満させ、何秒か待って剥がすとポジができる。これが拡散転写反転法というポラロイド写真の原理で、第一号機が市販されたのは1948年11月である。

エドウィン・H・ランド博士は、第二次大戦中に偏光板を軍事用に商品化するのに成功。戦後、偏光メガネで見る立体映画などで収益を上げたが、その後インスタントカメラの開発に進出して成功を収めた。ポラライゼーション(偏光)という言葉から造語した「ポラロイド」が社名や商品名に使われたのがその理由。

SX-70は元来のピールアパート方式ではなく、モノシート方式のパック入りフィルムを使用する最初のカメラ。
ランド博士がSX-70を発表した時は“アラジン"と呼ばれていた。それまでのインスタントフィルムは撮影後ネガシートとプリントを引き剥がし、必要に応じて中和剤のコーティングを施さなければならない「ピールアパート方式」であったが、ピントを合わせてシャッターを切ると、フィルムシートがジィーと飛び出してきて、そのまま放置しておくと、ジワーと画像が出てくる、完全自己現像方式の魔法のカメラであった。

SX-7-の特徴は、ユニークな全自動折り畳み式の一眼レフ方式(プリズムは使っていない)を採用した独創的カメラで、さらにCPU的制御を取り入れ、マイコン制御によりカメラを制御した最初のカメラでもあった。
ポラロイド社は電子制御式AEシャッターを採用した1963年発売の「オートマチック100型」とともに、カメラのエレクトロニクス化の最先端を走っていたメーカーであった。
この技術的思想を積極的に取り入れたのがキヤノンAE-1である。SX-70と同じようにテキサスインストルメント社のCPUを使い、カメラ機能の大幅向上とコストダウンを可能にして大成功した。
外観はヘアライン仕上げのステンレススチールのボディのように見えるが、樹脂(ポリサルフォン)の上に金属めっきしたものであり、これ以降日本のコンパクトカメラに続出する。貼り皮は本革である。
SX-70の折り畳みは原理的にフォールディングレフレックスタイプとは異なり、ミラーが45度にセットされた時が撮影時、たたまれた時がファインダーに像が出る時と普通とは逆転している。こうした方式は1907年に英国の写真家ネルソン・K・チャーチルという人が、そっくりそのままのデザインをブリティシュジャーナルオブフォトグラフィー誌に提案していると英国コダックミュージアムのブライアン・コウが自書に記している。
しかし、ポラロイドは単に真似たものではなく、ファインダーのピントグラスを省いて空中像で焦点合わせをさせるため第2ミラーを分割したフレネルレンズの反射面で構成している。また、反射光が直角をなさないので、フレネルレンズは同心円ではなく偏心してある。ミラー面はガラスでは加工が困難なのでプラスチックモールドである。

ファインダースクリーンには大型のフレネルレンズが採用されているが、わずか0.12mmのフレネル溝に微細な凹凸が付けられ、光の散乱や損失がなくピントが合わせやすい。この技術が後にミノルタアキュートマットスクリーンとして発展したことも有名な話。デザインはプロダクトデザイナーのヘンリー・ドレフュスである。
SX-70は、1978年10月発売のSX-70ソナーオートフォーカスに発展する。SX-70ソナーオートフォーカスはSX-70にオートフォーカスを組み込んだモデルで、オートフォーカスには静電気変換器から送信される超音波が被写体に当たってエコーが戻ってくるまでの時間を計り測距し、レンズをモーターで駆動する。超音波を利用したアクティブ方式のオートフォーカス機として世界初のカメラであった。

1999年頃「キムタクが使っている」ということで大ブームになった。また、アンディ・ウォーホルやジョン・レノンら著名人にも愛されたカメラである。

[掲載文献]
図説 カメラの歴史 P184
日本カメラ博物館「世界を制した日本のカメラ」 P21
写真工業 2006、4 Vol64 №684 P50
カメラレビュー8「一眼レフの歴史とそのメカニズム」 P57
カメラの歴史散歩道 P397 こだわりのカメラ選び Part2 P184
極上カメラ100 P196 きまぐれカメラBOOK P70
20世紀☆カメラ1950~2000 P49 図解・カメラの歴史 P205
中古カメラ完全カタログ5 P102 カメラスタイル№14 P59