先行機F4が、特にAF性能でキヤノンEOS-1、EOS-1Nに大きく水をあけられたので、ニコンとしては圧倒的性能を誇るカメラを作る必要があった。ニコンF5は、EOS-1Nを完全に打ち崩すという使命を持って生まれてきた。
機能的な特徴は、
- クロスセンサーの使用で5点測距を実現。
- 動体予測の高速化と連写時における確実性の向上。
- 確実にクイックリターン動作をしつつ毎秒8コマの巻上げ。
- 3D-RGBマルチパターン測光の実現
センサーには従来型とは異なるCCDが採用され、被写体の輝度だけでなく、距離や色情報も加味して適正露出を演算するという最新技術が盛り込まれた。
シャッターの耐久性は、F4までの10万回から15万回に引き上げられている。
露出制御:プログラムオート、シャッター速度優先オート、絞り優先オート、マニュアル
測光方式:1005分割3D-RGBマルチパターン測光、中央部重点測光、スポット測光
測光範囲:EV0~20
露出補正値:1/3ステップ、±5EV
ISO感度設定:6~6400、 DXコード
シャッター:電子制御式縦走りフォーカルプレーン、30~1/8,000秒、B、X(1/250秒)
ファインダー:アイレベル交換式(4種類)、視野率100%、倍率0.7倍
スクリーン:交換式(14種類)
フィルム給送:モータードライブ内蔵、最高8コマ/秒
高速連写時のためミラーバランサーが採用され、クイックリターンミラーを作動した状態で撮影可能。動体予測AF撮影時でも機能する。
フィルム巻き戻し:モータードライブ、緊急時のための手動巻き戻しクランクが残されている。フィルム巻き戻しは2段階操作が必要
電源:単3型乾電池8個、専用バッテリー
大きさ・重さ: × × mm、1210g
ボディ:アルミダイキャスト製でペンタプリズムカバーはチタン合金製、この上に直接塗
装。各所に配置したOリングにより防塵、防滴構造となっている
デザイン:F3以降採用しているジュージアーロによる
その他:24項目のカスタムセッティング機能
ボディ価格:325,000円
F5はモータードライブやバッテリーパックを分離型ではなく、一体型としたために、ボディの高さが149mmと高く、重量も増えている。操作は、主に二つの電子ダイヤルと背面の十字ボタンで行うタイプで、その後のデジタル一眼レフに近い操作性になっている。
F5は、プロ用ニコンで始めて液晶パネルによる撮影情報表示やバッテリー情報、フィルムカウンターなどその後のデジタル一眼レフにも繋がる操作系統に変更されている。
単3乾電池8本使用で約1.4Kgの超ど級のボディは、あまりの重さに弟分のF100を使用するプロカメラマンも増えたが、その圧倒的な性能と高い安心感で、いざという時にはF5を使うユーザーも多かった。
[掲載文献]
ニコン一眼レフのすべて P52
小倉巌夫 「国産カメラ開発物語」 P220
カメラこだわり読本 P42
世界の名作カメラ100 P80
趣味のニコンカメラ P115
銀塩カメラ至上主義 P257
こだわりのカメラ選び P67
究極のニコンカメラ P128
絶対に今主義 P154
ニコンカメラのここが一番攻略百科 P21
20世紀☆カメラ P85
国産実用中古カメラ買い方ガイド P57
季刊クラシックカメラ